手のひらひとつぶんの


窓辺が好きです
金色に散るミツバチ
ポットに汲んだ日の光

今日
あたりまえなはずの風景が
つぶやきました
ニセモノノ春ガ扉ヲタタク
ヒダマリガドコカニ
オシナガサレテユク
傍らでは見知らぬ沈黙が
ずるそうに笑っていました

トオクノ悲鳴
風ガアワテテ吹キケシタ
トオク?

言葉が消えてしまわぬよう
意気地なしの私を握りしめる
手のひらひとつぶんの
勇気だけ

いつもポケットに
用意しておきます


( 1984 発行『らふ樹』愛知県立瑞陵高等学校文芸同好会 )
( 2001.7.31 発行『星の文字』 加筆 )
( 2025.2.21 加筆 )


手のひらひとつぶんの(Suno) – こちら、ドワーフ・プラネット