imagination


私の夢とあなたの夢と
眠りの向こうの海辺、
遠い幼さでいつだったか
手をつないだこともあったでしょうか?

生まれる前のはるかな旅……
魚から目覚めて透明を泳ぎ
馬以前のうさぎ以前の人以前の潮の
たゆたいに洗われていた私達ですから
ずいぶん永い間いっしょに居たのでは?
?でしか語れないのは
一人ずつ生まれて個をたどりながら
きっといろいろ忘れてしまったから

一人ずつです
一人の自分しか見えない暗い場所に
踏み込むことも起こります、でも
暗闇でユニコーンを見ましたよ
ふいに優しい白さで、その瞳ときたら
子守歌でした
独りの夜、危なっかしく浮かんだ月に
思いがけずうさぎが跳ねていて
笑って言ったんです、
僕はずっと昔から地球を見てるよ

危なっかしいけれど、?と輪踊りを……
ずっと踊ってましたっけ、おなじ波で
ユニコーンも月のうさぎも私もあなたも
闇の向こう、虹色のリュートを奏で
語りべが呼んでいます、海の果て
地球の記憶の方角へと



( 1989.3.15 東京学芸大学国語科教育学 根本正義研究室 文学同人会発行『大人になった子どものために』掲載 )
( 2001.7.31 発行『星の文字』 加筆 )

( 2023.10.16 加筆 )
( 2023.10.15 イラスト作成 Bing Image Creator )